インタンジブルを深める




   お茶漬け  
     
 

TPP交渉で日本人の主食が“ライス”であることを知らなかった国もあると新聞にのっていました。あたりまえと思っている私たち以外の国の人には当たり前でないのは、あたりまえなのでしょう。

秋の夜長に思いついて、日本人が主食とするお米について考えてみることにしました。一体今まで何回食事をしてきたのか計算してみる。たとえば、70歳の人なら、12か月を70回生きて、840か月、日数にすれば、25,200日、13食で75,600回食事していることになります。そのうち朝をパン食、お昼を麺類で計算してもお米を主食とする食事は25,200回ぐらいがおおよその数字です。飽きないで25,000回以上よく食べ続けられたものだと思います。

それはひとえにお米が白く、無味、無臭、であるからであり、もしお米が黒や赤だったり、味がついていたりしたらとても続かなかったことでしょう。白くて何も余分なものがくっついていない、そうあることがいかに大きな無形の力であるかを感じてしまいます。”白い”はすべての原動力、何も施されていない生まれたままの姿こそ大きなインタンジブル・パワーです。見渡せばお米に限らず、絵のキャンバスや、子供の心だって〝白“です。

一粒の種の中にその秘密を解き明かすことができるでしょうか?お米がなぜ白いのかを解き明かせればノーベル賞をいただけないかしらなどと考える暇人がここにいます。

レストランでさんざんおいしい食事を楽しんでも3日続くとあなたは家に帰ってお茶漬けを食べたくなりませんか?ご飯の上にお茶漬けのもとを振りかけ、お茶を注いでその淡白さを味わえば体も心もすっきりです。 “simple is beautiful”。25,000万回のうち10分の一、つまり、2500回ぐらいお茶漬けを食べている私です。白いご飯に梅干を、炊き立てのお米に海苔を巻いて食べることを昔は「すっぽり飯」と言ったそうです。一昔前はそれが当たり前のお米の食べ方だったしお弁当はそれにお沢庵。飽食の時代に「すっぽり飯」は心安らぐ、ぜいたくの一品といってもいいでしょう。

どんなに技術が発展しても、色のついたお米はごめんです。味のついたお米もいやです。いくら食べ続けても飽きないお米がインタンジブル・パワーを持っているのを多くの日本人がそうと気づいていないのでないでしょうか。

無味、無臭”の白いお米を今日もふっくら炊き上げて秋の一日、白菜のお漬物で楽しんでいる私は最高の贅沢な気分です。

 
                                                        K.Yamakawa