インタンジブルを深める




     
     
 

水はニンジャです。変化自在の忍びの者。すべの生命を抱え込むインタンジブルなエネルギーそのものです。雪の結晶になったり、ふわふわの雲になったり、雨になったり、温まって蒸発したり、冷えて氷になったり、どの形も水の姿で、水に変わりはありません。

日本人はこれまでずっと、安全と水は「ただ」であると思っていました。3,40年前までは水にも安全にもお金がかからないと本当にそう信じていました。井戸水やポンプでくみ上げて育った私たちが今ではお金で水を買う羽目になりました。そもそも、猛暑の夏、熱中症対策に2リットルの水を飲まなければという発想自体、ボトル単位で計算しています。誰も水道水を量って飲む人はいないし、昨今は供給される水が安心だと思っている人もいません。

浄水器といい、ボトルの水といい、水を扱う産業は一大ビジネスとなっています。日本のWater Treatment(水処理)技術は海外でも大活躍です。水はこのようにタンジブルにも働いて大きな財源となっています。そんな水を大切にしないといずれ枯渇して生命の維持ができない日が来るのではないかと心配になります。1リットル1000円ぐらいになったらやっと水の大切さに気付くことでしょう。そのうち水相場というのができて、取水量によって世界が為替の様に今日は1リットル110円ですなどと売り買いをしたり、先物取引の銘柄になる日が来るかもしれません。良質な水源をもつ日本は世界の中心になることでしょう。すでに日本の水に目を付けている国が在るのも事実です。今に石油王ならぬ水王が誕生するのも時間の問題かもしれません。

こんな水のタンジブルな話はさておいて、水がロマンチックで摩訶不思議な力を持ち生活や生命の維持の他に人間の精神や生き方にインタンジブルパワーを与えてくれていることを知るのはとても大切です。水はすべての源泉になって私たちを潤わせてくれていることは、ギリシャの哲学者タレスの言葉にあるように、まさに見えるところで、見えないところで人類にエネルギーを与え続けてくれるのです。

水が教えてくれる、とっておきの「水の五訓」というとてもインタンジブルな啓蒙文を紹介したいと思います。私が仕事で悩んでいる時、故郷の母がどこかで読んだものを筆にしたためて送ってくれました。作者については不詳です、戦国時代の武将説や、古代中国の哲学者説あり、昭和初期の文人説ありというところが水のようで不思議です。

1 自ら活動して他を動かしめるのは水

2 常に己の進路を求めて止まらざるは水

3 障害に会い激しくその勢力を百倍にし得るのは水

4 自ら潔らかにして他の汚れを洗い、清濁を併せ容るる量あるは水

5 洋々として太陽を充たし発しては蒸気となり、雨となり、雪に変じて霰と化し凝っては
  玲瓏となる鏡となり、その性を失わざるは水なり

私なりに解釈すると、次のようになるでしょうか。

水は黙々と活動して全生命を営むインタンジブルエネルギー。水は淡々と自分の進むべき道をゆく。水には宇宙のビジョンがあるからだ。水はどんな困難や障害に在ってもエネルギーを百倍にできる力を持つインタンジブルパワー。人類や生物の体や心の穢れを受け入れ洗い流してくれる。その器の大きさは宇宙そのものと同じ。太陽から熱をもらい、蒸発して、雨に、雪に霰に姿を変えつつ地球上のすべての生命を生かしめる。水は永遠に鏡のごとく澄み切った天性を失うことがない。

これぞ、まさに私がいつも思い描く宇宙の「成功のサークル」*そのものなのです。

                                (*「ベーシックコース」参照)
 
                                                        K.Yamakawa