インタンジブルを深める




   信用と信頼  
   
 

信用しないでお金を貸すことができますか?
信用しないで雇用契約を結びますか?
信頼しない相手をパートナーとして選ぶことができるでしょうか?
信頼のない友人関係を継続することができるでしょうか? 

私たちはこんなことを日常茶飯事、感じながら生きています。昨日まで信じていた人の心が今日は変わり、身内であっても、他人との関係であっても、瞬時に関係はもろく崩れます。自分の心だって四季の移りゆくごとく揺れ動きます。

人間、すべての人が「信用信頼」問題で悩み、ストレスを抱え、これが、人生の80%の苦しみの源といっても大袈裟ではないとなれば、そんな人生をよりすこやかに送り、精神的打撃を少なくする方法を何としてでも見つけなければなりません。

ほとんどの人は信用と信頼を混同しています。確かにこの二つには共通点があります。
信用も信頼も二つ以上の関係の中で生まれます。保証のない、不確定な状態からスタートします。リスクが付き物ですが期待や、好結果を求めて関係を維持しようと務めます。しかし根本的にこの二つの言葉を分けて理解をすればもっとすっきりします。信用はよりオフィシャルで公的、まさにタンジブルな関係です。信頼は情動的で私的でインタンジブルなものです。

「信用とは」
金銭関係や雇用や取引等、より公的な関係の間で使われます。
相手との関係を目に見える明確な形にし、契約書や証明書といった紙を媒体にして、期限を設け、取り決めに従い、義務を持って遂行します。だから感情が絡みません。金銭関係や問題が持ち上がった時、崩れそうになったときは、公的機関、例えば裁判所、警察、公正取引、労働基準監督所、弁護士、行政書士などによって解決できます。一定期間の間に義務、基準を果たしたら、その終了と同時に関係も終わりです。完遂さえすればいたってクールな関係です。登記簿謄本、契約書、保険証書、遺言書、免許証やパスポート、印鑑証明書など期限が切れるまで、タンジブルな書類はいつでも取り出せ、しかも安全なところに保管しておくのは賢明です。案外、日常の雑事にまみれ、いざとなったら探しまくっている人のなんと多いことか。ご主人だけが知っているのに、奥さんが知らないのも問題です。

最近は結婚契約書というものをかわし、「双方の親の面倒は自分たちで見る」、「互いに体重を10キロ落とす」などと書いて第三者の面前でハンコを押す人もあるそうです。とても若さがあふれていてユーモラスでいいですね。

「信頼とは」
人間の情動や心が介在し、時間に設定はありません。相手の心を信じて頼り、条件や決まり事があるわけではありません。まさに、インタンジブルな関係です。人間関係のほとんどが信頼ベースで成り立ち、親子、夫婦、兄弟、友人、同僚、と身近な関係はより親密でさらに情動的になります。「今日の友は、明日の敵」という真実をついた諺があります。いい関係が結ばれている間は、幸せ、安心、希望、満足、夢などポジティブな気持ちがあふれているのに、ひとたび崩れると,真っ黒に焦げてしまいます。相当な心身ダメージを引き起こし、別離、絶交、失望、恨みなど修復はおいそれといきません。再起不能に陥ることもあります。蜘蛛の糸の様にいまにも切れそうな危うい関係を双方の努力、理解でいつまで続くかわからない時間の中で築き上げなければなりません。忠犬ハチ公の様に亡きご主人を無条件で信頼し、自分が死ぬ日まで慕い続ける心を学びたいものです。

本当に大切な人間関係においては、金銭消費貸借契約書のような証文など、まったく必要としないことを知っておくべきです。そのためには、「何をすべきか」「関係がどうあるべきか」を一生のあいだ、常に問い続けなくてはなりません。

 
                                                        K.Yamakawa