近くて遠い。遠くて近い。
タンジブルであるはずなのに、時としてインタンジブルな姿をみせる「距離」というものほど、ミステリアスなものはありません。
車の免許の筆記試験で、50キロのスピードで運転している時、前の車と何メートルの車間距離を保っていなければなりませんか?という質問事項がありました。車間距離はいわば、タンジブルな測ることのできる距離ですが、生きてゆく上で、物差しで測れない距離もたくさんあります。むしろこちらの方が多いでしょう。
人間関係、お金、モノ、事、仕事には測ることのできない「距離」が大きな力を秘めています。一人一人、距離の取り方は異なりますが、上手に距離を取っている人はストレスを避けることが出来ます。生きてゆく上の悩みのほとんどすべては距離をないがしろにしているからだと思えます。「距離をあける」「距離をとる」というのは一つの才能でしょうか。
「距離」という言葉の意味を英語の分厚い辞書を見ながら、自分なりに考えてみました。
1 二つのあいだのスペース
2 離れた状態
3 遠い場所
4 時間的なスペース
5 親しさや和やかさの欠如
6 二つの異なる言語上の差
7 人や物との隔たり
8 地理上の差
9 意見の違い
遠くの親戚より近くの他人ということわざがあります。
組織のヒエラルキー上においては、大切な関係が修復不可能にならぬよう、発言には注意しなくては。そして地球上でいま起こっている各国間の衝突は、こうした様々な顔を持つ「距離」が関係してきます。場所、時間、人間の心理、言語、すべてにかかるインタンジブル・パワーなのでしょう。
物事を俯瞰する...全体を指揮するには、距離ほど大切なものはありません。政治も経営もしかりですが、その最たるものは戦争です。近くて遠い国にならぬよう願いたいものです。隣同士であっても理解しあえないのは人間が「距離」を取って冷静にならず、さらに、そのパワーの下で欲望をむき出しにしているからです。
なるほど、欲をセーブすればいい距離がたもてるのだ、または、距離を保てば、欲がセーブできるのだ...今年は自分の物差しをしっかり持って、ほどよい「距離」を保つことに挑戦したいと思っています。
*『日本人になったユダヤ人』~「フェイラー 」ブランド 創業者の哲学~(大江 舜)が発刊されました。亡き主人の伝記でございます。ご一読くださればうれしく存じます。書店、アマゾンで取り扱っています。
|