インタンジブルを深める




   国際空港  
   
 

むかし飛行場と呼んでいた場所はいつのまにか、空の港、「空港」と呼ばれるようになりました。こうした国際空港を離陸した航空機が毎日、7000機も地球のまわりを飛び回っているのだそうです。管制塔のおかげで衝突などせずに離発着でき、コンピュータ操作によりジャンボな巨体が空を駆け昇り、降りてくる姿は壮観です。でも、忘れてはいけません。人間の造ったものは、大きな自然災害にあえば、あっけなく破壊されたり、機能不全に陥ってしまうのです。それとを思い知らされたのは、2011年の東北大震災の津波でした。このときは仙台空港がやられました。今年になってからは、台風による浸水で、海の上に築かれた世界トップレベルの利用客を誇る大阪の関西空港が、続いて札幌の新千歳空港が孤立してしまいました。

ビジネス、観光、国際会議、公式な訪問, 私的な目的で、成田空港を一つとっても年間4000万人の人が利用します。それに貨物ときたら何十万、何百万トンになるのか想像もつきません。だから、空港が使えなくなると、たいへんなことになります。普通の建物などとはちがって、建築基準も極めて厳格なはずです。人、物といった目に見えるものを運ぶための空港は安全、快適、迅速さを追求する施設であることはもちろん、清潔、正確、厳格な規則、法律にのっとった管理やサービスも世界に通じるスタンダードでなければなりません。もちろん、これらはあくまで、目に見えるタンジブルな存在としての空港の役目です。大きく、美しければいいだけではすみません。

しかし、離着陸のたびに、それといっしょに運ばれる、目に見えないインタンジブルな何かがあることに気づきませんか? 興奮と安堵感やときめきなど様々な感情。期待、好奇心、喜び、嬉しさ、人の事情によっては悲しみや苦しみなど、あなたの手荷物は20キロ、30キロと規制をかけられていますが、心は1トンの重さを運び込んでいるかもしれません。見えないものも空を駆け巡るのは旅の醍醐味です。

世界中どこの国際空港にも大きな観覧バルコニーがあります。そこへ、携帯無線機を持って管制塔の英語の指令、キャプテンとの交信を聴きにいく男性の航空マニアの人たちがいるそうです。それは経験した人でしか理解できない楽しい世界だそうです。なにせ、国際空港は広がる空の上を夢や冒険がかけめぐる玄関口です。それを、地上にいても体験してみたいという気持ちがわからないでもありません。航空周波数帯が受信できるマニアックな無線機は秋葉原に行けば手にはいるそうです。わたしも女だてらに無線機を持ってバルコニーに出てみようかな。ちなみに世界一、発着度の高い空港は、米国のハブ空港となっているアトランタで88万回、羽田はその半分の44万回だそうです。

国際空港は、有形、無形の両方を運び入れ、運び出す玄関口。あなた自身、あなたのスーツケース、あなたの夢や喜びのすべてが無事に到着し、離陸できますように。


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                                                        K.Yamakawa    
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